yabえほんプロジェクト

MAKING

「メイドイン山口」の絵本ができるまで

画像:絵本の挿絵

『もう のこさんよ』制作に込めた思い

「子どもたちにSDGsを分かりやすく伝えたい」。

この思いから、私たちは「yabえほんプロジェクト」をスタートしました。山口県のテレビ局として日々地域の情報発信をしていますが、未来を担う子どもたちにSDGsの大切なメッセージを伝えるには、もっと身近で親しみやすい方法が必要だと感じていました。

画像:野菜のキャラクターと子供の絵

絵本は子どもが手に取りやすく、数年にわたって大切に読み継がれる特性があります。物語を通じて自然に学びを得ることができ、読み聞かせを通じて家族や地域との絆も深まります。SDGsの理念を子どもたちに伝える媒体として、絵本ほど適したものはないと確信しました。

山口県立大学との連携で生まれたアイデア

画像:講義を聞く山口県立大学の生徒

絵本のストーリーを考え始めるにあたり、地域の若い感性とともに進めていこうと考え、山口県立大学と連携することにしました。趣旨に賛同いただいた同大学の国際文化学部文化創造学科にご協力いただき、2・3年生の演習授業に「SDGsをテーマとした絵本のアイデア考案」を組み込んでもらいました。

学生たちには「エコ」をテーマに調査と発表を行ってもらい、2週間の準備期間を経て寄せられたアイデアは実に59案。どれも若い感性にあふれた素晴らしい提案でした。

画像:絵本「ごみごみおばけとたかしくん」

その中から選ばれたのが、当時3年生の竹本歩未さんによる「ごみごみおばけとたかしくん」というアイデアです。「食べ残しをしていた主人公のもとにおばけが現れ、心を入れ替える」という設定は、子どもたちにも分かりやすく、物語として展開しやすいと考えました。

画像:竹本さん
山口県立大学国際文化学部
竹本歩未さん

「ACT NOW」から物語のテーマを決定

画像:いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。1.5℃の約束

テーマ設定では、国連情報センターが推進する「1.5℃の約束」キャンペーンと連動することにしました。国連が地球温暖化防止のために呼びかけている「ACT NOW(今すぐ行動を)」の「個人でできる10の行動」の中から、園児に身近で理解しやすいものを選びました。

それは、「野菜をもっと多く食べる」「廃棄食品を減らす」の2つです。

画像:野菜を食べる子供の絵

植物性食品の生産は温室効果ガスの排出が少なく、食料廃棄を減らすことで生産から輸送まで使った資源やエネルギーの無駄もなくなります。

野菜を残さず食べることで、体の健康だけでなく地球にも優しい選択になることや、食べ物を無駄にしないことが地球環境を守ることにつながる。

「小さな一歩で、大きな未来を変えていこう。」

そんなメッセージを「野菜を食べる」という日々のアクションに込めてSDGsを伝えていこうと考えました。

山口らしさを込めた物語づくり

画像:会議室で話し合うyab社員

竹本さんのアイデアをベースに、yab内のチームでストーリーを練り上げていきました。この過程で重視したのは「山口らしさ」です。

野菜のオバケのキャラクターには、山口県萩市の特産品「萩たまげなす」を採用しました。「たまげる(驚く)」ほど大きくなるこのユニークなナスは、地元の人々に長年愛されており、子どもたちにとって分かりやすく、身近で親しみやすい存在。たまげるほど大きなオバケとして登場したら面白がってくれるのでは、と考えました。

画像:ナスのキャラクターに乗った子供の絵

さらに、「山口生まれの野菜であれば、山口弁をしゃべるよね。」そんな社内のアイデアから、たまげなすのセリフは山口弁で統一することにしました。

県内公募で選ばれたイラストレーター

画像:山藤さん
イラストレーター
山藤裕之さん

物語に命を吹き込むイラストは、絵本の魅力を大きく左右します。より広く県内の才能を発掘するため公募を実施し、最終的に選ばれたのは、宇部市在住のイラストレーター・山藤裕之(さんとう ひろゆき)さん。アニメーターとしての実績もあり、画力の高さと構図の面白さが決め手となりました。

しかし、山藤さんにとって、子ども向け絵本のイラストを描くのは初めての体験。「どうすれば子どもに面白く読んでもらえるだろう。」そんな思いで、いろいろな絵柄やイラストを描く試行錯誤の日々を過ごしたそうです。

画像:プロダクションノート
プロダクションノートより

同じ1つのシーンでも、主人公の性格を考えながらアングルや構図を工夫して描き分け、それを元にyabのチームと話し合い、一番子どもに興味を持ってもらえそうなイラストを決めていきました。

こうして、山藤さんのユニークなイラストによって、萩たまげなすのオバケもイキイキとして魅力的な存在に。オリジナリティあふれる絵本として仕上がっていきました。

画像:萩たまげなすのキャラクターの絵
画像:プロダクションノート

実は、本編内に登場する萩たまげなすと一緒に現れた野菜のオバケたち。こちらも「はなっこりー」「千石台だいこん」など、山口産の野菜をモデルにしているんですよ。

地域の思いが込められた一冊

画像:出来上がった絵本

こうして、山口県立大学の学生のアイデア、山藤さんの表現力、多くの地元企業の協力により、「メイド イン 山口」の絵本『もう のこさんよ』が完成しました。

この絵本には、未来を担う子どもたちに大切なメッセージを届けたいという私たちの思いと、地域の様々な人々の願いが込められています。

画像:読み聞かせを聞く園児たち
画像:親子の絵

『もう のこさんよ』のストーリーを通して、野菜をたくさん食べ、環境を大切にする心が子どもたちに伝わることを願っています。